舌がんと食道がんは同時になりやすい?【よくある疑問】

堀ちえみさんが自身のブログで、早期の食道がんがみつかったことを公表されました。つい先日舌がんの手術を受け退院されたばかりのタイミングに、新たながんが見つかったということで心配されている方も多いことでしょう。

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このニュースを聞いた方の多くが「せっかく手術したのに既に食道に転移していたなんて残念」と思われるかもしれません。しかし、今回の食道がんはおそらく別にできた早期の病気でしょう。なぜなら舌がんが食道自体に転移することはほぼないからです。そして、早期食道がんであれば十分治癒が望める時代なのでこのタイミングでわかったことは悪くないニュースだと思います。

がん治療に携わっている立場からすると、こういった重複癌(2つのがんがほぼ同じタイミングでみつかること)は珍しいことではありません。以下に示すように、舌がんを含む口腔がんと食道がんのリスクは同じものが多いのが理由です。

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舌がんのリスク

  • 喫煙
  • 飲酒
  • 歯並びの悪い歯や合わない入れ歯・かぶせものによる慢性的な刺激
  • 口腔清掃の不良
  • 栄養状態が悪い
  • 一部のウイルス感染

口腔がんでは最多の舌がんですが、飲酒・喫煙が最大のリスクファクターです。とくに飲酒しながらのタバコは、アルコールで溶け出すため舌にとって最悪の環境をつくる、といわれています。

そして、お酒もタバコもやらない若い女性なのに舌がん?というケースでは、ほとんどの場合、歯並びの悪い歯やかぶせものが舌に当たって傷つきやすい状況が背景にあります。

食道がんのリスク

日本人には多い食道がんは扁平上皮がんという種類で舌がんと同じ種類の病気です。一方、欧米では肥満や胃食道逆流症がリスクとなる腺癌が多いことが知られています。僕ら日本人がなりやすい食道の扁平上皮がんのリスクは以下の通り。

  • 喫煙
  • 飲酒
  • お酒で顔が赤くなる
  • 熱い飲み物
  • 一部のウイルス感染

3つ目に挙げた「お酒を少しでも飲むと顔が赤くなる体質」の方、決して少なくないですよね(飲んでも悪酔いしない欧米人にはほとんでいない)。顔が赤くなる方々はアルコールを分解する酵素が生まれながらに欠けているので、お酒を飲むと有害なアルデヒドが身体の中をめぐり発がんしやすくなります。

このように、頭頚部がん(舌がんを含む口腔がんなど)と食道がんのリスクは重なるものが非常に多いです。そのため、同時に2つ以上のがんが見つかることもまれではありません。これらのがんと診断された方は、まず病気の正確な診断をするとともに、他の頭頸部・食道がんがないか必ずスクリーニング検査をします。

将来、舌がんや食道がんになりたくない方、少しでもリスクを減らしたい方はまずお酒やタバコを控えることから考えるといいですね。それでもやめられない場合は、定期的な胃カメラや舌のセルフチェックをオススメします。がんと言っても早期であればしっかり治せることが多いので。

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